旦那様、お嬢様へ
書かなきゃ書かなきゃとは思いつつ、筆が乗らない日々を過ごしていました。
やらなきゃいけないことって沢山あるんですけどつい日常を優先してしまって後回しにしがちなんですよね。
というのも理由の一つなんですが、どちらかと言うと気持ちの整理がどうしても必要で。
1年も前から告知してきたにも関わらず、いちばん受け入れられていないのが自分という情けない結果だったみたいです。
受け入れられていないって言うのはちょっと語弊があるんですけど、今までずっと追いかけてやってきたことを辞めるって言うのはやっぱり一筋縄ではいかないというか、頭で理解してても心が追いついてこないというか、なんというかそういう感じです。
辞めるってどういうことかと言うと、ひとつのコミュニティを手放すことだとも思ってるんですよね。
みんな最後だからいつも以上に優しいし、手放すのも惜しくなるってもんです。
直後はさみしーーーって気持ちでいっぱいでした。沢山あたたかい言葉をいただいて、本当に沢山泣きました。全部嬉し泣きですもちろん!
自己肯定感めちゃくちゃ低くて(でもプライド高くてめんどくさくて)、こんな人間に、と常にうっすら思っていましたが、こんなにも素敵な縁がたくさんたくさんあったことを最後にしっかり分からされました。本当にありがとうございました。
卒業までに、「なんで辞めるんですか?」と沢山尋ねられまして、何度か簡単に口頭でお答えしたことはあるんですが、より詳しく考えをまとめるいい機会でもありますので、改めてここに記します。
卒業の理由ですが、
「2026年には辞めようと、2022年の復帰当初から決めていた」
が、理由としての大枠でした。
その中に、区切りがないといつまでもズルズル続けてしまいそうであること、私は長くこの業界にプレイヤーとしている事に向いていなさそうなこと、甘やかされている事に甘え続けていることは良くないと考えていたこと、など、小さな理由が点在していました。
「区切りがないといつまでもズルズル続けてしまいそう」というのは、私に限ったことであって、他の長く続けられているメイドさん達に対して何か思っていたりすることではないので、その点は明記しておきます。
むしろ、長くメイドさんを続けられている方々には尊敬の念を抱いていますし、これからも長く続けて欲しいと思っています。私より後輩のメイドさん達にも、どうか健やかに、楽しく長くメイドさんを続けてね、とも思っています。
「私は」どこかでメイド人生を終わらせなくてはいけない、と常々考えていました。極論、私はメイドさんになれるような人間ではないとも思っていました。向こう見ずな性質が功を奏して、上手いことメイドさんになることが出来てはや十数年、奇跡のような時間だったと思います。長く続きすぎた奇跡でしたね。
若いだけで何とでもなる時期はとっくに過ぎていて、でも、それ以外で戦えるものも特段持ち合わせていなくて、いつか辞めなくちゃな、と思っていたというわけです。
評価してくださる方に失礼かなと思ったので補足しますが、自分自身長所として認識しているところはもちろんありますが、メイドさんでなくてもいいのかな、と少し考えてしまったんですね。
この業界、多かれ少なかれ自分を切り売りして商売をしています。私自身、自己評価として自分に商品価値を見出しづらかった所もあり、甘やかされ続けることに罪悪感がありました。
そこで、終わりを決めることで、「ここまでなら甘やかしてもらってもいいだろう」と、自分を納得させていたところもあります。
沢山の施しを受けましたが、私には返せるものが微々たる分しかないと思っていて、そこに不均衡を感じることもあり、もどかしさを抱えていました。
ネガティブな事ばかり書き連ねてしまいましたが、悲しい思い出というわけではありません!もちろん!
この十数年の経験は本当に奇跡のような経験でした。今までに起きた出来事ひとつひとつは、今まで過ごしてきた場所、関わった人がいなければ、この結末には至らなかったので。
大変なことだってそれはもう沢山ありましたけど、それらがあるから今があるので。
卒業、廃業を発表してから1年間、たーくさん卒業を悔やんでくださる声をいただきました。
卒業前後に、たくさんたくさんたくさん、暖かい言葉をいただきました。
もうこれでもかと言うくらい、私はこの十数年が間違ってなかったと思わせてもらいました。
卒業を迎えてようやく、私も少しは何かを返せていたのかなと思うことができました。
長く不安を抱えながらのメイド人生、最後に全てが救われました。
結局私は最後まで、皆さんからいただきっぱなしだったような気もしますが、幸せなので、まあいいか。
いつも言っていましたが、私が作った時間で、少しでも楽しんでもらえていたら幸いです。
卒業に寄せて、何通かお手紙をいただき、こわくて読むことができませんでしたが、今になってようやく読みまして、私に心を砕いてくださる方がいることにとても感激しています。
私という「メイド」の思い出が、あなた方の今後の人生に、少しの彩りになれればなと思っています。応援していますよ〜!
ものすごく長くなりましたが、私のような異分子を受け入れて下さり心より感謝しております。
メイドとしての及川遙月の長らくのご愛顧、誠にありがとうございました。
メイドの及川遙月より